杉本屋ブログ

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プラチナ万年筆 #3776 CENTURY 秀逸なる一本

 今回は、筆者愛用の万年筆のことを書きたいと思います。

 もっとも愛用と言っても、普段からメモや日記を書くのに常時使っているかというと、そうではなく、筆者はもっぱら手紙を書く時と署名にしか使っていません。

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プラチナ万年筆 センチュリー#3776

 当然、今は、書簡を出すことも少ない世の中ですから、使用頻度から言うとかなり低くなりますが、万年筆というものは、はっきり言って、実用の筆記具というより、既にそこから離れた文化性、趣味性の高いものになっていると思います。

 例えば照明器で言うと、キャンドルやガス燈のようなノスタルジックな雰囲気があるもの、といえば言い過ぎでしょうか。

 ともあれ、このプラチナ万年筆の #3776センチュリーを紹介したいと思いますが、その前に、万年筆というものについての、私なりの所見や雑感に暫時お付き合い頂ければ幸いです。

歴史

その起源から

 万年筆の起源は思ったより古く、953年、エジプトで発明されたと言われています。

 その後千年近い時が流れ(その間何の発展もなかったのでしょうか??)、場をイギリスに移し、1809年9月23日、フレデリック・バーソロミュー・フォルシュという人が、特許を取得したのが最初だそうです。

  日本では、1884(明治17)年、横浜のバンダイン商会が輸入し東京・日本橋丸善などで販売されたことは世に知られていますが、同年、大野徳三郎が模作したものが国産初の万年筆と言われています。

 が、この人がどこのどんな人だったかは詳らかにはなっていません。

その普及期

 末永く使える、という意味で、「万年筆(萬年筆)」になったそうですが、この訳を考えたのは内田魯庵という人らしいです。

 その後、日本の万年筆製造は第一次世界大戦後(1918年以降)に盛んになり、1940年にはピークを迎え(翌年、大東亜戦争)、世界第2位の輸出国となっていたそうです(やはりここでも国威国力というものを反映していますね)。

 輸入直後にそれを模作した大野徳三郎といい、1940年には世界第2位の輸出国になるなど、やはり日本人の器用さ優秀さを物語っている事実だと思います。

 1960年代頃までは、公文書を書くための筆記具として主流でしたが、徐々にボールペンの台頭があり、1970年代に公文書へのボールペンの使用が可能になったこと、安価な低筆圧筆記具である水性ボールペンが開発されたことなどにより、万年筆は実用筆記具としての役割を終えた感もあります。

だからこそ

 黎明期や普及期には、単に実用的で便利だからと言って喜ばれた道具だったと思いますが、近年、万年筆は、趣味性の高い文具として見直されていると思います。そこには持てることへの歓びや、コレクションとしての対象という側面もあると思います。

 どの分野の物や道具でも、何かの理由で実用という面から離れていくにつれ、美(趣き)という面が浮き出てくる、というのはどうやら真理のようです。

 さて、前置きが長くなりましたが、その国産万年筆の中でも秀逸な一本として、何が良いのかということを具体的に述べていきたいと思います。

  特徴

スリップシール機構 インクが乾かない

 

 プラチナ万年筆独自の、キャップを閉めると完全に密閉できる、という機構です。

 なので、インクが容易に乾きません。2年間放置していても大丈夫ということです。

 インクには染料系と顔料系がありますが、後者は乾くと容易に水に戻らない特徴があり、使用には注意が必要ですが、この機構を持ったプラチナの万年筆なら安心して使用できます。

軸の長さ、フォルム、バランスが優れているf:id:sanseidow21:20191008141325j:plain

 持つと、抜群のホールド感と絶妙の重心位置、そして美しいフォルムとも相まって、秀逸な書き心地を生み出してくれます。

(ただクリップのデザインは幅広でさほど筆者の好みではありませんが)

絶妙な書き心地を生み出すペン先

 インクフロー(吐出量)は、どちらかと言うと渋い方だと思いますが、ニブに独特のしなりがあり、先端に行くにしたがって平らに変化していく形状が、不必要にペン先が開くことを防いで、傑出した書き心地を実現しているのではないかと思います。

ペン芯などの工作精度の高さ

 以下、メーカーによると、

ペン先とペン芯の相性を合致させるべく試作を繰り返し、ペン先・ペン芯は おろかボディーに至るまで、クリップ以外は全て新しいデザインによる 新しい金型投資による完全に生まれ変わった万年筆

 と言っているように、素人の私にでも、じっと見ていると、そのこだわりと技術精度の高さが伝わってきます。普通の万年筆と違って、ペン先にペン芯がぴったり密着しているのです。またそのスリットが深く刻まれていて、気圧の変化によるインクフローの不必要な変動を抑えているらしいです。

実際書いてみて

 以下、作例と言っては大袈裟ですが、筆者の下手な字で、実際書いたものを少しご覧頂きたいと思います。ちなみに私の所有している個体のペン先は極太です。

書簡

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 セーラーのプロフィット21のように、筆圧を強めにかけても、しなやかに受け止めて、柔らかく滑らかに書けるかというと、そうではなく、節度ある適度な硬さと反発を残したサリサリと言った感じの書き味で、これぞ万年筆の王道といった感があります。

 決して滑らかさがない、という意味ではありません。

 あえてカラー画像で掲載していますが(うまく伝わりません)、プラチナ純正の#1ブラックインクは、いわゆる真っ黒ではなく、独特の甘さがある黒で(個人的には好み)、分かりやすく言うとほんの僅かにグレーかかったような、あるいは濃紺かかったような黒です。

 これが嫌な方は、顔料インクの使用をお勧めします。

原稿用紙

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 今どき原稿用紙に向かう人もあまりいないと思いますが、試みに、夏目漱石草枕を書いてみました。これは書簡などの罫線に沿って書くだけのものと違って、ある程度升目に納める気が必要ですので、ペンポイントの正確性とでも言うのでしょうか、その万年筆の癖(手前寄りとか)が分かりやすいのではないかと思います。
 センチュリーはほぼ、ペンポイントに癖はなくそのままという感じだと思います。

 純正インクだけを使うならカートリッジでも良いのですが、色々なインクを入れて試してみたいのでコンバーターを使っています。

 筆者個人としては、ブルーブラックを常用としたいのですが、公式文書には黒を指定してこられることが多いので、仕方なく、いつもは黒系のインクを使っています。

 

まとめ

 万年筆は使い込めば使い込むほどその人の書き癖を覚え、育ってくる筆記具です。その意味では人への貸与は余りおすすめ出来ない筆記具ですが、長年かけて育てる楽しみがあります。これは他の筆記具にはまずあり得ないことだと思います。
 また通称「インク沼」とも呼ばれている、色々なインクを入れて試せる楽しみもあります。

 筆者は万年筆マニアでもコレクターでもありませんが、日常、筆記するということに趣味的な潤いと楽しみを与えてくれる万年筆という文具が好きで使っているだけです。

 パソコン等の普及で、ますます手書き文字は縁遠くなっていますが、やはり手書きには手書きの良さがあり、いくら、例えばiPadApple pencilが素晴らしい書き心地だ、と嘯いても、こういう潤いや趣には遠く及びません。

  筆者が所有している万年筆は、5指に余る程度ですが、機会があれば今後また紹介していきたいと思っています。

 最後までお読み頂き有難うございました。