こんにちは杉本屋です。
今回は、PILOTのフラッグシップモデル・カスタム845を紹介したいと思います。
この一本は、筆者の場合、メモや速記、たまにハガキを書くのにも使っています。ちなみにペン先は中字Mです。
それでは早速この一本について述べていきたいと思います。
特徴
軸の質感とバランス
軸はエボナイトの削り出しで、漆塗りで丹念に仕上げられています。
明らかに樹脂製の軸とは違い、しっとりとした奥行きのある質感で、持つと温もりを感じ取ることができます。
重心はやや後ろよりにありますが、それがペンを長く持つことに寄与していて、ペン先に筆圧を掛けずに紙面を走らせる書き方を促しているように思います。
日本語は書きやすいか
カスタム74もそうですが、他社の万年筆と比べると、楷書でキチンとハネたり、トメたりする書き方にも向いていると思います。安定性が高く滑らかでスムーズな書き心地です。かと言って草書も同様に良好です。
充分なしなりをもつペン先
ニブ(ペン先)は大きく、金と銀のいわゆるバイカラーです。しなりは充分で、筆圧に応じた良好で適度な追随性があります。
インクフローが潤沢
安定して豊富なインクフローを保有しています。プラチナのセンチュリーなどはそれが渋目のため、紙によってはカスレ気味になることがありますが、カスタム845は紙など選ばず安定していてスラスラと書けます。
プラチナ万年筆 #3776 センチュリーついては過去記事をどうぞ。
重厚かつ堅牢なデザイン
キャップを閉じた状態でも、軸はカスタム74より実際はやや長いのですが、太さがあるので長くは感じません。キャップと尻の両端を切ったような形状がより重厚感を醸し出しているように思えます。
国産コンバーターの中でインクの入る量が最も多い
CON-70という1.1mlの容量のものが付属しています。たぶん他社のものと比べて倍くらいの容量があると思います。もちろんカートリッジインクも問題なく使用できます。
コストパフォーマンスは高いとは言えない
高精度高品質、書き心地も頗る良いのは十分伝わりますが、メーカー希望価格50,000円(税別)なので、残念ながら、CP的に低くはないですが、高いとも言えないと思います。
舶来礼賛ではありませんが、ここまでの価格帯になってくると、モンブランのマイスターシュテュックが見え始めてきますので、かえって所有している人は少ないのではないでしょうか?
実際書いてみて
以下、作例と言っては大袈裟ですが、筆者の下手な字で、実際書いたものを少しご覧頂きたいと思います(これは動画の方が良いですね)。
書簡
どちらかと言うと845のペン先は楷書に向いている気がします。もちろん草書体のような続いた曲線の文字を書いても問題はありません。頗る良好です。
カラー画像で掲載していますが、PILOT純正のブラックインクは、いわゆる真っ黒です。悪く言うと趣に欠けるという言い方も出来るかも知れません。
このカスタム845は、平常時はコンバーターで、インクはプラチナのブラックインク入れていますが、今回は純正インクカートリッジを使用しました。
原稿用紙
今どき原稿用紙に向かう人もあまりいないと思いますが、試みに、夏目漱石の草枕を書いてみました。これは書簡などの罫線に沿って書くだけのものと違って、ある程度升目に納める気が必要ですので、ペンポイントの正確性とでも言うのでしょうか、その万年筆の癖(手前寄りとか)が分かりやすいのではないかと思います。
ペンポイントに癖はなくそのままという感じだと思います。
まとめ
PILOT カスタム845はシリーズ最高峰を謳うだけに、確かに素晴らしい万年筆だと思います。筆者にとっては、高価な製品ですが、軸の品位の高さと質感の良さで安定したホールディング性がある上、潤沢で安定したインクフローで書きやすく、重厚かつ堅牢、精緻な一本と言ったところでしょうか。
万年筆は使い込めば使い込むほどその人の書き癖を覚え、育ってくる筆記具です。その意味では人への貸与は余りおすすめ出来ない筆記具ですが、長年かけて育てる楽しみがあります。これは他の筆記具にはまずあり得ないことだと思います。
また通称「インク沼」とも呼ばれている、色々なインクを入れて試せる楽しみもあります。
筆者は万年筆マニアでもコレクターでもありませんが、日常、筆記するということに趣味的な潤いと楽しみを与えてくれる万年筆という文具が好きで使っています。
パソコン等の普及で、ますます手書き文字は縁遠くなっていますが、やはり手書きには手書きの良さがあり、いくら、例えばiPadとApple pencilが素晴らしい書き心地だ、と嘯いても、こういう潤いや趣には遠く及びません。
筆者が所有している万年筆は、5指に余る程度ですが、機会があれば今後また紹介していきたいと思っています。
今回はPILOTのカスタム845でした。
最後までお読み頂き有難うございました。